SOUから最新の情報を
お伝えします。
「障がい福祉の在り方」から考える、ダイバーシティ社会の実現
2023年10月19日(木)、20日(金)の二日間、第62回全日本特別支援教育研究連盟全国大会徳島大会が開催されました。
今年度のテーマは、
『「共生社会の中で,夢や志をもち,主体的に活躍する子どもたち」~ 多様な個性が輝く特別支援教育を目指して ~』
でした。
▶ http://zentokurenhp.world.coocan.jp/zen_taikai/62nd_tokushima_2ji.pdf
徳島県の取り組みを全国に発信
「ダイバーシティ社会を推進する支援学校をつくるための徳島県の委員会」が開催されたのが平成2年。そこから教育委員会への報告書提出があり、今回の全国大会へとつながりました。
「新しい時代の在り方検討委員会」会議録最終報告(案)はこちら ▶ 5_dai5_kaigiroku (1).pdf
支援学校を地域のダイバーシティ計画の核とする
ダイバーシティを目指す!という社会の動きはあるものの、いったい何から取り組めばいいのか!?と、日本中の学校が頭を悩ませています。
そんななかで、徳島県では、早くから障がい福祉分野の専門家の意見を集め、「支援学校を地域のダイバーシティ計画の核とする」という大きな一歩を踏み出してきました。
そして、その「委員会」で、、取り組みの先頭に立ち、委員長を務めていたのが、株式会社SOUの顧問であり、感覚統合療法について研究し、教鞭をとり続けてきた冨樫敏彦氏でした。
ダイバーシティ社会の実現に向けて
「ダイバーシティ社会とは、年齢や性別、障がいのあるなしに関わらず、持って生まれた力を120%発揮し、共に社会をつくりあげていく、ということをゴールにしています。
しかし、ビジョンは見えるけれど、どう実現していけばよいのか。
なにを実行すればそれが現実になるのか、それが見えてこない。
それが実際のところではないでしょうか」と冨樫顧問。
今回の大会では、こうしたダイバーシティ社会の実現をはじめ、地域と学校の関わりや、子どもたちが個性を発揮し活躍できる未来に向けて、全国から先生たちが集まり意見交換や発表が行われました。
ダイバーシティ社会の中核を担う学校経営とは
コロナ禍で、開催中止や誌上開催が続いていた「全日本特別支援教育研究連盟全国大会」。
3年ぶりの大会で、報告会・基調講演・分科会は、これまで以上の熱気にあふれていました。
二日目は、15の分科会のひとつに参加し、助言者を務めた冨樫顧問。
担当したテーマは
「学校経営 地域とつながる学校経営の在り方
○地域に開かれた学校経営
○ダイバーシティ社会を目指す教育活動」でした。
和歌山県有田市立箕島小学校・徳島県徳島市北井上中学校の校長先生の提案発表に対し、東京都立羽村特別支援学校の校長とともに助言を届けました。
徳島の新時代を切り開く「国府支援学校」とその役割
徳島では、市内の国府支援学校が、「ダイバーシティの先導モデル」として、二年半後に新たな局面を迎えることが決まっています。
「平成2年の委員会開催から、ようやく今回の大会の誘致。
そして、国府支援学校の改築・改修。
そこからはじまる、「ダイバーシティの先導モデル」としての働き。
気の長い仕事だけれど、着々と進んでいますよ」と冨樫顧問。
新しく整備される国府支援学校に期待されている役割についても、詳しく教えてくれました。
1)地域の高齢者との交流と地域課題の解決
~100年時代を生涯現役で活躍~
「国府支援学校のある地域は、農業を営む人が多い場所です。同時に高齢化も大きな課題。
そこで支援学校の生徒たちが地域の畑を耕し、農作物をつくり、農業をリアルに体験し、農業を継承する計画があります。
また、地域の高齢者の方たちにも、技術やノウハウを伝える講師役として活躍する機会を持っていただくこともできるんですよ」
と冨樫顧問。
高齢の方が、「引退」するのではなく、これまでのご経験を活かして、若い世代に技術を伝えていくことで、「一生涯現役」であり続ける姿が目に浮かぶようでした。
2)女性や若者の力を活かした生涯学習のきっかけと拠点づくり
~誰もが生き甲斐を持てる社会~
「新たな国府支援学校には、ダイバーシティ棟があります。
地域に開けた学校にするために、ダンスや絵画、歌や音楽を楽しんでいるサークル活動をしている方に、ダイバーシティ棟を利用してもらい、生徒たちとの交流の場につなげていきます。
幼いころから、こうした余暇活動に参加することで、生徒たちの生涯学習の実現も目指します」。
障がいのある人達にとって、大人になってから余暇や生きがいに巡り合うのは、実際問題、簡単ではありません。
でも、地域の人が気軽に足を運べる環境を整えることで、子どものころに余暇に出会えます。地域の人との交流も生まれます。
ダイバーシティ社会の実現は、様々な視点がなくてはならないのだと、考えさせられました。
3)支援校の持つ「センター機能」発揮
~全県へ、そして全国へ~
国府支援学校の今回の改修・改築は、三つ目の目的が最も重要になると話す冨樫顧問。
「分校も含めて、徳島県内には11の支援学校があります。
支援学校には、小中高の学校と連携するセンター機能が備わっているので、国府支援学校の外に開けた取り組みをモデルケースとして示すことは、県内だけでなく、全国に先駆けて大きな動きとなるはずです」。
熱く語る冨樫顧問の話に、聞いている事業所のみんなも、『ダイバーシティ社会』の実現がどんどん頭の中で広がり、ワクワクしていたかもしれません。
「私たちにできること」を考え、動き出そう
「もちろん、これらすべてを実現するには、10年、20年という長い時間がかかるからね」と厳しい表情も見せる冨樫顧問。
そう、国府支援学校の改築や改修は、あくまで「はじめの一歩」です。
そこからは、障がい福祉に関わる私たち全員が、「なにか」をする番なのです。
特別支援学校・特別支援教室・障がい福祉事業、こうした現場を知る人たちが力を合わせて、動き出すことこそ「ダイバーシティ社会の実現」なのだと、改めてこの仕事に関わることの魅力を実感した瞬間でした。
私たちの仕事の延長線上にある「ダイバーシティ社会」
二日間の”全特連”徳島大会を終えた冨樫顧問は事業所に帰ってから、
「学校経営という視点から、特別支援教育に関心を寄せてくれる先生方を増やすのは、とても大切なこと。
学校・支援学校・障がい福祉事業所が拠点となり、ダイバーシティ社会を実現していくために、みんなでできることを考えていく。
そんな地域をつくっていこう」
と、私たちに笑顔で語りかけてくれました。